
ある日突然、働き盛りの社員が心筋梗塞で倒れた——そんな知らせが届いたとき、「うちでも起きるかもしれない」と感じた経営者・人事担当者の方は少なくないのではないでしょうか。
虚血性心疾患(心筋梗塞・狭心症)は、日本における主要な死亡原因のひとつです。そして近年の研究により、その発症リスクを高める要因として「睡眠時間の乱れ」が注目されています。睡眠が4時間以下の女性では、虚血性心疾患による死亡リスクが7時間睡眠の人と比べて2.32倍高いというデータもあります。
このコラムでは、睡眠と心疾患の関係性をデータとともに整理し、組織として何に気づき、何に取り組むべきかをお伝えします。
目次
1. 「突然の心疾患による休職」が組織に与えるコスト
2. なぜ睡眠の乱れが心臓のリスクを高めるのか
3. 「長く寝れば安心」でもない——睡眠時間の最適解
4. 個人の努力に頼らない、組織的な睡眠改善のアプローチ
5. まとめ
1. 「突然の心疾患による休職」が組織に与えるコスト
心筋梗塞や狭心症といった虚血性心疾患(心臓に栄養を送る血管が狭くなることで心臓の機能が低下する病気の総称)は、発症が突然かつ深刻である点において、他の生活習慣病とは異なる経営リスクをはらんでいます。
糖尿病や高血圧は、悪化のサインが比較的緩やかに現れます。しかし心筋梗塞は、前触れなく職場で倒れることも珍しくありません。中堅・中核社員が突然長期離脱した場合の影響は、単なる「人員不足」にとどまらず、プロジェクトの停滞、チームの士気低下、採用・育成コストの再発生と、組織全体に波及していきます。
加えて、こうした心臓系疾患は入院期間が長期化しやすく、復職後も業務制限が生じるケースがあります。「健康で働き続けられる人材を確保する」ことは、人的資本経営の観点からも、いまや経営の優先課題です。
では、そのリスクを高める要因のひとつが「睡眠」であることは、どこまで組織として認識されているでしょうか。
2. なぜ睡眠の乱れが心臓のリスクを高めるのか
睡眠の乱れと虚血性心疾患の関係は、主に以下の2つのメカニズムから説明されています。
① 動脈硬化の促進
睡眠不足や睡眠過多が続くと、血管の内壁にダメージが蓄積しやすくなります。その結果、コレステロールが沈着して血管が厚く硬くなる「動脈硬化(血管が老化・硬直し、血液が流れにくくなる状態)」が進行します。動脈硬化が進んだ血管は詰まりやすくなり、心筋梗塞や狭心症の発症リスクを高めます。
② 交感神経の過活動による血管収縮
睡眠が乱れると、自律神経のバランスが崩れ、交感神経が優位になりやすくなります。交感神経が過剰に働くと血管が収縮し、心臓の筋肉に送られる血液量が減少します。これがいわゆる「虚血状態(心筋への血流が不足した状態)」を引き起こす原因となります。
こうした変化は、日々の睡眠習慣の積み重ねの中で静かに進行します。従業員本人が「少し疲れやすくなった」と感じていても、それが心臓のサインであると気づかないまま働き続けているケースは少なくありません。

3. 「長く寝れば安心」でもない——睡眠時間の最適解
ここで重要なのは、「短すぎる睡眠だけがリスクではない」という点です。
睡眠時間が4時間以下の女性では、7時間睡眠と比較して虚血性心疾患による死亡リスクが約2.32倍高いという報告があります。これだけでも十分に深刻ですが、実は睡眠時間が10時間以上の場合も、男性で1.56倍、女性で1.54倍のリスク上昇が見られています。
つまり、リスクの構図は「寝すぎ・寝なさすぎ」の両端に存在し、7時間前後を中心とする適切な睡眠時間が、心臓への負荷を最小化するとされています。
この「適切な睡眠時間」の確保が職場でどれほど難しいかを考えると、問題の根は深いことがわかります。残業が多い部署では慢性的な短時間睡眠が常態化している一方、体調不良や抑うつ傾向のある従業員が長時間睡眠になっているケースもあります。どちらの状態も、心疾患リスクという観点では等しく注意が必要です。
「社員個人の生活習慣の問題」として片付けることは、経営的にも人道的にも、もったいない対応と言えるでしょう。


4. 個人の努力に頼らない、組織的な睡眠改善のアプローチ
睡眠の問題は、「意識すれば改善できる」と思われがちです。しかし実際には、職場環境・業務設計・職種特性・夜型の生活リズムなど、個人の意志だけではコントロールしにくい要因が複雑に絡み合っています。「もっと早く寝なさい」という個人への注意喚起が根本的な解決につながりにくいのはそのためです。
重要なのは、組織として「睡眠の現状を把握する」ことから始めることです。どの部署に、どのような睡眠課題があるのか。その実態を知ることで、自社に合った取り組みの方向性が自然と見えてきます。
3eep planningでは、法人・組織向けの睡眠改善支援として、現状把握から実践支援、効果測定までを一貫して担う「3eep Approach」を提供しています。睡眠の専門知識と組織課題の両面から介入できるのが特徴で、「何から手をつければいいかわからない」という段階からご相談いただけます。
心疾患リスクを高める睡眠の乱れは、組織内にすでに存在しているかもしれません。その「見えていないリスク」を可視化し、行動に変えていくための伴走者として、まずは一度ご相談ください。
5. まとめ
睡眠と虚血性心疾患の関係は、「個人の健康問題」ではなく「組織のリスク管理」の問題として捉え直す必要があります。
短時間睡眠(4時間以下)でリスクが2倍以上、長時間睡眠(10時間以上)でも1.5倍超——このデータが示すのは、「適切な睡眠時間の確保」が従業員の心臓を守る最前線であるということです。働き盛りの社員が突然倒れる前に、組織として「睡眠の現状」を知ることが、人的資本を守る第一歩になります。
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