「ちゃんと寝ているのに、なんとなく午後になると集中力が落ちる」
──社員からそんな声を聞いたことはないでしょうか。
あるいは、体調不良による欠勤や業務上のミスが気になりつつも、原因の特定が難しく、対策が打ちにくいと感じているかもしれません。

睡眠時間を確保することは大切です。
しかし実は、睡眠の効果は「何時間眠ったか」だけでなく、「どのような睡眠サイクルを経たか」によって大きく変わります。
この視点が抜け落ちていると、社員がどれだけ就寝時間を早めても、翌朝のパフォーマンスは改善されないままになってしまいます。

本記事では、睡眠のメカニズムである「レム睡眠・ノンレム睡眠のサイクル」を解説し、それが組織の生産性にどう影響するかを、経営・人事の視点でお伝えします。
「眠りの構造」を正しく理解することが、従業員支援の第一歩です。

目次
  1. 「ぐっすり眠った感覚」と「翌日のパフォーマンス」がずれる理由
  2. 睡眠サイクルの仕組み──ノンレム睡眠とレム睡眠が果たす役割
  3. サイクルが乱れると、組織に何が起きるか
  4. 眠りの構造を知った上で、組織として何ができるか

1. 「ぐっすり眠った感覚」と「翌日のパフォーマンス」がずれる理由

業務上のパフォーマンスが落ちている社員に話を聞くと、「特別に眠れていないわけではない」という答えが返ってくることは珍しくありません。
「なんとなくだるい」「思考がまとまらない」「午後に頭が働かない」という状態は、睡眠時間の不足だけでは説明がつかないケースが多くあります。

その背景にあるのが、「睡眠の深さと回復の質」という問題です。
人の睡眠は、眠っている間ずっと同じ状態が続くわけではありません。
深い眠りと浅い眠りが交互に現れ、その組み合わせによって、脳と身体が翌日の活動に備えるための回復が行われています。

つまり、睡眠時間が確保されていても、この「深さの波」が適切に機能していない場合、回復は不十分なまま朝を迎えることになります。「ちゃんと寝たはずなのに」という感覚と、翌日のパフォーマンス低下が同時に起きる理由は、ここにあります。

2. 睡眠サイクルの仕組み──ノンレム睡眠とレム睡眠が果たす役割

睡眠には大きく「ノンレム睡眠」と「レム睡眠」の2種類があります。
この2つが一組となって「睡眠サイクル(睡眠周期)」を形成し、一晩で4〜5回繰り返されます。
1サイクルの長さはおよそ70〜120分で、個人差があるほか、その日の健康状態によっても変化します。

ノンレム睡眠:身体と脳を「休息モード」へ

ノンレム睡眠は、入眠直後から始まる深い眠りです。段階的に深くなる3つのステージ(ノンレム1・2・3)で構成されており、とくに就寝から最初の90分間は最も深いノンレム睡眠(ノンレム3)が現れやすいとされています。

この段階では、心臓血管系の活動が落ち着き、体温や代謝が低下します。脳と身体が「休息モード」に移行するこのフェーズは、日中に蓄積した疲労を回復させるうえで不可欠です。

レム睡眠:脳を「覚醒準備モード」へ

レム睡眠は、ノンレム睡眠の後に訪れる比較的浅い眠りです。
入眠初期にはほとんど見られませんが、朝に近づくにつれて割合が増えていきます。

このフェーズでは、心拍・呼吸・血圧が上昇し、深部体温も上がります。脳が「覚醒モード」への移行準備を進めるこの時間帯は、記憶の整理や情動の調整に関わるとされており(※要出典確認)、思考の柔軟性や感情のコントロールにも影響します。

レム睡眠が十分に確保されないと、翌朝の判断力や創造性が発揮しにくくなる可能性があります。
営業やマネジメント、創造的な業務を担う社員にとって、レム睡眠の確保は単なる「健康管理」以上の意味を持ちます。

目覚めのタイミングも「サイクル次第」

最も自然な目覚めは、レム睡眠が終わりに近づく「最も浅い睡眠段階」で起床したときとされています。
睡眠サイクルの途中で深い眠りを強制的に中断されると、脳の準備が整わないまま活動を始めることになり、午前中の思考パフォーマンスに影響が出やすくなります。

3. サイクルが乱れると、組織に何が起きるか

睡眠サイクルが適切に機能しない状態が続くと、社員の身体・脳は十分な回復を得られないまま翌日の業務に臨むことになります。
「少し疲れた」程度の自覚であっても、こうした回復不足が積み重なれば、業務パフォーマンスへの影響は確実に蓄積していきます。

具体的には、集中力・判断力の低下、感情調整の難しさ、エラーや見落としの増加といった変化が現れます。
これらは個人の「やる気」や「意欲」の問題ではなく、睡眠サイクルの機能不全に起因する生理的な変化です。

問題は、こうした影響がマネージャーや人事の目には見えにくい点にあります。
プレゼンティズムとして現れる生産性損失は、欠勤よりもコストが大きいことが指摘されており、表面化するまでに時間がかかるぶん、組織への影響が長引く傾向があります。
(出典:横浜市立大学・産業医科大学 原 広司准教授ら(2025)「The Impact of Productivity Loss From Presenteeism and Absenteeism on Mental Health in Japan」Journal of Occupational and Environmental Medicine をもとに改変 参考:https://www.yokohama-cu.ac.jp/news/2025/20250611hara.html

睡眠サイクルの乱れは「個人の生活習慣の問題」にとどまらず、組織全体のパフォーマンスに静かに影響を与えているのです。

4. 眠りの構造を知った上で、組織として何ができるか

睡眠の質を高めるための行動は、知識があれば個人でも取り組めます。
しかし、組織としての課題解決となると話は変わります。

睡眠サイクルには個人差があり、ノンレム・レム睡眠のバランスはその日の健康状態によっても変動します。
「全社員に同じ情報を提供するだけ」では、個々の状態に合わせた改善には結びつきにくいのが現実です。
さらに、業務負荷・シフト体制・職場環境・ストレス要因など、睡眠の質に影響する要素は組織の構造と深く絡み合っています。

3eep planningでは、こうした組織固有の課題を踏まえたアプローチを提供しています。
睡眠の専門的な知識を持つスリーププランナーが、現状の把握から実践支援・効果測定まで、組織の実情に合わせた「3eep Approach」を通じてサポートします。
社員への一律な情報提供で終わらず、組織として継続的に取り組める仕組みづくりを一緒に考えることが、私たちの役割です。

まとめ

社員の「眠れているのに疲れが取れない」
「午後になると集中できない」
という状態は、睡眠時間ではなく睡眠サイクルの問題である可能性があります。
ノンレム睡眠による身体の回復と、レム睡眠による脳の覚醒準備
──この2つのフェーズが一晩に4〜5回繰り返されることで、はじめて翌日のパフォーマンスが整います。

このメカニズムを組織として理解し、社員の眠りの質に目を向けることが、見えにくい生産性損失を防ぐ最初のステップです。


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