
「会議中に、うとうとしている社員がいる」「以前より、ケアレスミスの報告が増えた気がする」「有給休暇や休職の相談が、じわじわと増えている」——こうした変化に、心当たりはないでしょうか。
多くの場合、こうした不調は「本人のやる気の問題」として片付けられがちです。しかしその背景には、「睡眠」という見過ごされやすい経営課題が隠れていることが少なくありません。本記事では、従業員が「眠れない」状態に陥る生理的なメカニズムと、精神論だけでは解決が難しい理由、そして組織として取り組む際の考え方をご紹介します。
※ 本画像はAIにより生成されたイメージです。画像内の人物は架空のものであり、実在の人物とは関係ありません。
目次
- その不調、「気合が足りない」で片付けていませんか?
- なぜ、社員は「眠れなく」なるのか
- 組織としてできること、専門家に任せるべきこと
1. その不調、「気合が足りない」で片付けていませんか?
社員の遅刻や居眠り、ケアレスミスの増加は、本人の意識の問題ではなく、睡眠不足による「見えない生産性低下」のサインであることが少なくありません。
こうした状態は「プレゼンティーズム」と呼ばれ、アブセンティーズム以上に見えにくく、それゆえに対策が後回しにされやすいという特徴があります。横浜市立大学の原講師らが2025年に発表した調査によると、メンタル不調によるプレゼンティーズムの年間損失額は約7.3兆円、アブセンティーズムは約0.3兆円と、その差は約24倍にのぼります。両者を合わせた損失額(約7.6兆円)は日本のGDPの約1.1%に相当し、精神疾患の医療費(約1.1兆円)の7倍以上という規模です。欠勤した社員には周囲も気づき対応できますが、不調を抱えたまま出勤している社員は見た目には普通に働いているように見えるため、損失が積み重なっても気づかれにくいという構造があります。

さらに視野を広げると、米シンクタンクRAND Corporationの調査(2016年)では、日本全体における睡眠不足に起因する経済損失は最大1,380億ドル(日本のGDPの約2.92%に相当、喪失労働日数は約60万日)と試算されており、日本人の平均睡眠時間はOECD加盟33カ国中最短という調査結果(OECD「Time use across the world」2021年)もあります。

つまり、目の前の一人の「なんとなく調子が悪そう」は、決して些細な出来事ではなく、組織全体で見れば無視できない規模の損失につながっている可能性があるのです。だからこそまず経営として、「これは個人の弱さではなく、組織として向き合うべきマネジメント課題である」という認識に立つことが、最初の一歩になります。
2. なぜ、社員は「眠れなく」なるのか
社員が「眠れない」と感じる背景には、多くの場合「過覚醒:就寝時間になっても、活動時に優位になる交感神経が鎮まらず、心身が興奮したままの状態)」と呼ばれる生理的な状態があります。
睡眠は本来、環境の変化やストレス、不安といったささいな要因によって非常に崩れやすいものです。起床時刻のばらつきや日中の過ごし方といった一見無関係に見える行動も、夜の眠りの質に影響します。特に、入眠時に仕事の考えごとが頭から離れない、日中のストレスや緊張が抜けないといった状態が続くと、就寝時間になっても交感神経が優位なままとなり、寝つきにくさや眠りの浅さが慢性化していきます。
さらに厄介なのは、「眠れない夜」を繰り返すこと自体が、次の不眠を招く引き金になる点です。ベッドの中で「眠れない」と感じる時間が長くなるほど、無意識のうちに「寝床=苦しい場所」という思い込みが形成され、ベッドに入ること自体が緊張や不安のスイッチになってしまうのです。寝つけないことへの不安が、さらに不眠を強めるという悪循環が生まれます。
これは意志の強さや根性で制御できる領域の話ではなく、自律神経の働きという生理的なメカニズムの話です。だからこそ、「早く寝ろ」という号令や個人の努力任せでは変化させることが難しく、組織として継続的に働きかける視点が求められます。
3. 組織としてできること、専門家に任せるべきこと
過覚醒のように自律神経が関わる不調は、画一的なマニュアルの配布や一度きりの研修だけでは、なかなか変化させることができません。睡眠の乱れは、個人の生活習慣、職場のストレス要因、働き方の癖などが複雑に絡み合って生じるため、一人ひとりの状態を継続的に把握し、軌道修正しながら伴走する仕組みが必要になるからです。
弊社3eep planningでは、独自の「3eep Approach」として、現状把握から、リラックス習慣の導入など実践面の支援までを一連のプロセスとして専門的に伴走しています。社内の担当者だけで抱え込むのではなく、外部の専門的な知見を組み合わせることで、場当たり的な対策ではなく、継続的に効果を検証できる仕組みとして睡眠改善に取り組むことができます。
まとめ
「眠れない」という状態は、本人の弱さではなく、交感神経が鎮まらない「過覚醒」という生理的な反応であり、さらに「寝床への不安」という無意識の思い込みが重なることで、慢性化しやすいという性質を持っています。だからこそ、精神論による声かけだけでは変化を起こしにくく、組織として継続的に向き合う体制を整えることが、見えない生産性損失を防ぐための現実的な一歩になります。
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